異文化間におけるやさしさとは?

多文化共生もLITTLE ARTISTS LEAGUEにおいては、大きな課題の一つです。本展では様々な国の方からの「やさしさエピソード」が展示されています。異文化間教育の研究者であり実践者である岩澤直美さんと一緒に、異文化間におけるやさしさとは何かを考えてみました。

ルミコ:「学生の頃から異文化で育ち、尊重し合う為にボランティアなどの活動をスタートさせたとお伺いしましたが、具体的にどのような想いで、どのような活動をされているのでしょうか?」

岩澤:「世界には、様々な人が住んでいて、多様性に溢れています。家庭や学校、会社や地域など、私たちの日常のコミュニティの中にも、様々な“違い”があります。また、私たちは個人としても、人種や国籍、性別などの様々なアイデンティティを持ち合わせています。人種や国籍、性別などの属性だけでなく、価値観や考え方など、すべての人に“違い”に気づき、受け入れ、尊重し合うことが、多文化共生社会だと考えています。」

――“違い”を排除する社会から、 “違い”を強みに変える社会へ。

岩澤:「これが、私が高校生の時に立ち上げた会社、Culmony(カルモニー)のビジョンです。日本とチェコにルーツをもつ1人として、日本、ハンガリー、ドイツの文化的に異なる地域や学校を経験して気がついたことは、違いを持った人同士が対話を重ねることの重要性です。時には、文化や価値観の違いによるトラブルや、無意識な偏見によって他者を傷つけてしまうことがありました。相手を尊重しながら対話をすることが相互理解や異文化受容、偏見を減らすことにつながることを実感してきました。」

岩澤:『Culmonyは、CultureとHarmonyを掛け合わせた造語です。異文化交流のワークショップやダイバーシティー研修を、学校や企業、自治体などへ提供して、対話を促しています。小学生向けて交流イベントから、中高生の異文化間対話、大学での講義や、企業での研修など、多様な世代に向けて、異文化交流に求められる知識、スキル、態度と意識を高める教育を展開しています。」

岩澤:「特に大事にしているのが異文化に対する尊重する気持ちや、交流と対話をしようとする積極的な興味関心を深めることです。このような意識と態度を「異文化間感受性」と呼びます。異文化間感受性をどのように高めていけるのか――この問いに対して、今は東京大学大学院で研究を行っています。学習プログラムを設計し、それを受けてもらうことによって、どの程度異文化交流への積極的でリスペクトのある姿勢が身につくのかを調査しています。大学院で研究しながら知見を増やし、それを学校などの現場で実践することを繰り返しながら、日本で異文化間教育を拡げていきたいと思っています。」

やさしさとは、尊敬と愛の表現物。岩澤直美

Kindness is an output that comes from respect and love

— NAOMI IWAZAWA

SPEAKERS

  • 岩澤直美(異文化間教育の研究者&実践者)

    株式会社Culmonyの代表として、学校や企業に異文化間コミュニケーションの教育と研修を提供している。また、東京大学大学院にて異文化間教育の研究を行っている。チェコと日本人のミックス。

  • ルミコ・ハーモニー(LITTLE ARTISTS LEAGUE)

    LITTLE ARTISTS LEAGUE共同代表、アーティスト、アクティビスト。フィンランド人と結婚し三児の母になったことをきっかけに、気候変動問題をはじめとする社会問題を意識するように。オーガニック展でのこどもの絵のコンテストの審査員を務めるなど、アートを通じて社会課題を解決するアプローチをしています。